みなさんは「TCH」という言葉をご存じですか?TCHとは「Tooth Contacting Habit」の頭文字をとったもので、意味は”上下の歯を無意識にくっつけている癖”のことをいいます。通常、上下の歯は数ミリほど空いているのが正常な状態です。TCHにより、常に上下の歯が接した状態が続くと、歯に圧力がかかり、歯を支える歯槽骨にも過度な負荷がかかるため、歯や歯周組織だけでなく全身にも大きな影響を及ぼすことになります。
また、歯ぎしり、噛みしめは歯や歯槽骨に伝わる力がTCH以上に強いため、歯や歯周組織への影響はさらに大きなものとなりますが、就寝中に無意識にしていることが多く、自分で気づくことは難しいといえます。
放置すると歯を失う原因にも…
TCH、歯ぎしり、噛みしめは、放置しておくと歯に亀裂が入り、割れたりすることがあります。また、歯肉や歯周組織に炎症が起こって歯周病を進行させたり、知覚過敏の悪化にも繋がります。さらに、顎関節や筋肉に余計な力が加わることから、顎関節症をはじめ、頭痛や肩こり、耳鳴り、めまいといった全身症状をきたす場合もあります。
TCHの段階では歯が接している程度なので、歯を失うリスクは小さいのですが、癖になってしまうと次第に歯ぎしりや噛みしめへとエスカレートする恐れもありますので、意識して改善することがとても大切です。
初期症状をチェック!早めの対策を
TCH、歯ぎしり、噛みしめの治療を遅らせてしまう原因は、自分で気づきにくい点にあります。 まずは初期にあらわれやすい、
- 知覚過敏
- 詰め物がとれやすい
- 起床時に顎や顎の周りがこわばっている
このような症状を感じたらTCHや歯ぎしり、噛みしめを疑いましょう。次にTCHの有無をチェックする方法をご紹介します(図参照)。意識して上下の歯を離すことに、ストレスや違和感があるかがチェックの指標となります。
具体的な治療法
TCHの有無をチェックし、既に初期症状があらわれはじめている方は、専門機関を受診してください。TCHが疑われる場合には、歯を離すことを意識することからはじめてみましょう。日常生活で視界に入りやすいパソコン画面やテレビのリモコン、洗面台、トイレ、食卓などに「上下の歯を離してリラックス」などと書いたメモ紙を貼るなどして、意識しやすい環境をつくりましょう。
身についてしまった癖は簡単には抜けません。メモを見て意識することを3~4カ月続けると、メモを見なくても自然と上下の歯は接しなくなります。
既に歯ぎしりや噛みしめにより強い症状があらわれQOLに支障をきたしている場合は、マウスピースをはめてダメージを防ぐことを優先しましょう。